ある当事者会主催者の独り言 第1回
ある当事者会主催者の独り言 第1回
はじめまして。
「みどる」中高年発達障害当事者会のMediumと申します。
皆さん、発達障害の当事者会をご存知だと思います。
わたしは2015年から、「みどる」中高年発達障害当事者会を運営しているMediumと申します。
わたくし共の会では、相談機能を重視して茶話会を開催しておりますので、毎回、多くの困りごとを参加者さんから伺う機会があります。
今回はご挨拶を兼ねて、発達障害の当事者会ではどんな話題が「困りごと」として話されているのか、ご紹介したいと思います。
ただし、発達障害の当事者会には会ごとにカラーがあって、あえて難しい話をしない居場所機能を重視している会も多く、必ずしもすべての当事者会でこのような話がされている(できる)わけではないことはご理解いただければと思います。
今回、なぜ当事者会での話題、それも困りごとについて取り上げたかと申しますと、現在療育中のお子様が将来直面する可能性がある困りごと、あるいはご自身も課題感のある親御様、そして発達障害を受けている人を支援している方に、成人・中高年の発達障害者が日頃どのようなことを困難に感じているかのご参考になればと思ってのことです。
そして、過去8年間、延べ1000人以上の方の困りごとを伺っているうちに、成人した発達障害者の困りごとは、大きく3つのカテゴリに分類できるのではないかと思っています。
困りごと1:「人間関係」
世間一般にも「発達障害」という言葉が広く知られてきましたが、発達障害と聞いて一般の人が想像するのは「コミュニケーションの障害」だと言っても過言ではないと思います。
困りごとの筆頭は、やはり「人間関係」だという印象があります。
ただし、人間関係と言っても、更に大きく4種類にわけられるのではないかというのが経験則です。
まずは「家族関係」。
親子であれば、「ひきこもり・8050問題」や「毒親」のような深刻な事例でなくとも、定型発達の方と比べて、やはりお互いに課題感のある関係の方が珍しくありません。
そして、兄弟や夫婦といった関係でも、やはり課題感のある方がいらっしゃるようです。
特に最近では夫婦間では「カサンドラ症候群」などと言った話題を世間でも耳にするようになりました。
次に問題になるのが「(医療・福祉・行政などの)支援者との関係」です。
主治医にうまく自分の気持ちを伝えられないとか、福祉や行政の方と自分が希望する形での支援が受けられていないなどコミュニケーションがうまくいかない悩みを聞くことがあります。
3番めは「友人・知人」です。
あるいはそれほど深い関係でなくても、外で店員さんとうまく話せない、人の中で雑談が始まると何を話していいのかわからず上の空になってしまうなどの困りごとをよく耳にします。
最後は「職場関係」です。
上司や同僚とコミュニケーションがうまくいかないというやつで、これもよく困りごととしてあげられますが、「みどる」では、職場の人間関係は「人間関係」ではなく「仕事関係」で取り上げることにしています。
困りごと2:「仕事関係」
人間関係と並んで、困り感が強いテーマに「仕事関係」があります。
ある方がかつて「発達障害が辛いのは、発達障害そのものではなく、発達障害があると稼げる環境に身を置き続けるのが難しく、経済的に困窮することだ」と言っていたのが記憶に残っています。
このテーマも更に3つに分かれるように体感しています。
仕事を現在されていない方にとっては、「適職探し」と「仕事の探し方」などがテーマになることが多いです。
更に働き方にしても「オープン(障害者雇用)にするのかクローズ(障害を告げずに一般就職)にするのか」は定番のテーマでもあります。
現在、働いている方にとっては「職場サバイバル」が頻出のテーマです。
やはり、特性上仕事がうまくいかず、自分でも壁を感じているばかりでなく、上司や同僚の厳しい視線が辛いという方は少なくありません。
更には、長引く不況で労働環境が厳しくなっていて、リストラ候補にされていたり、二次障害による休職明けをうまく乗り切れるかといった深刻な話も珍しくありません。
そして最後は「上司・同僚との人間関係」です。
なぜ、職場の人間関係は「人間関係」で扱わず「仕事関係」になるのでしょうか?
少し、刺激的な言い方ですが「職場の人間関係が悪いのを『人間関係』と思っているうちは改善しない」ぐらいに言うことがあります。
職場の人間関係は言うまでもなく、友人ではなく仕事での関係です。
そして、発達障害者が職場の人間関係を悪化させる理由は、コミュニケーション能力ではなく、仕事で同僚や上司に迷惑をかけていることが原因であることがほとんどだからです。「命令した仕事をやらずに、余計なことをする」「あいつと仕事組まされると自分の仕事が増える」といったことの積み重ねが原因であることが大半だからです。
そこを理解せずに「人間関係」の問題と考えていては事態は悪化する一方でしょう。
困りごと3:「日常生活」
日常生活も困りごとも大変なことが多いです。
ADHDの人が失くし物が多いとか、部屋が片付けられないなどは有名ですが、ASDの方も家事が苦手で片付けができない方は珍しくありません。
日常生活での困りごとの「ライフハック」と呼ばれる小技やちょっとした小道具の活用などは、本質的な対策にはならないのですが、小さなストレスの積み重ねを防いでくれることが珍しくありません。
日常生活の困りごとを解決する小技や工夫はないかという「ライフハック」に関する話題も定番の一つです。
しかし、個人の工夫には限度があります。そこで、公的支援制度についての話題は、貴重な情報になります。
実は結構、公的な制度は整備されているのですが、日本の行政は徹底した申請主義なので、困っていようが、使える制度があろうが、行政から教えてくれることは期待できません。
いくらいい制度があっても「知らない制度には申請できない」のです。というわけで、各人の困りごとに対して、使えそうな制度はないかという情報交換ができる機会は貴重だと思います。
日常生活での話題の3番めは「健康」です。
うちの会が中高年を対象にしていることもあるのですが、メンタル面に限らず健康上の不安を持つ方も多いです。
特に、メンタル面の既往歴があると、漠然とした不調はメンタルのせいにして放置してしまうことが珍しくありませんが、会では内科的な原因が隠れていないか、検査してもらうことを勧めています。
まとめ
今回は自己紹介をかねて、主催する会でどのような困りごとが話されているのかをご紹介いたしましたが、次回から3回に分けて、今回ご紹介した3つのテーマ「人間関係」「仕事関係」「日常生活」で更にどのような困りごとが話題になるかをそれぞれご案内できればと思います。
最後まで、お読みいただき、ありがとうございました。