ADHDの特性を持つ人に言ってはいけない言葉

今日は、ADHDの特性を持つ人に言ってはいけない言葉というテーマでお話ししたいと思います。

まあ、言ってはいけないという表現も言い過ぎかなとは思いますが、特にお子さんをサポートする保護者や学校の先生方には注意していただきたいことなんです。
一番言ってほしくない言葉は、約束事を破ってしまったときに「なんで約束を守れないの?」「何度言ったらわかるの?」というような否定的な言葉をかけることです。
ADHDの特性で注意欠如や衝動性により記憶に残っていない、あるいは忘れてしまうということは多々あるんです。

私もかなりあります。
最近は、自分で意識できるようになってきて記憶に残るようになりましたが、子供のころはほとんど記憶に残っていないことが多かったんです。
「なんで私、また同じことで叱られているんだろう」
叱られたときには、叱られている内容はわかっていることもあるんです。
ただ、どうして自分が約束を破ってしまったのかということはわからないんです。
ちょっと何を言っているのかわかりませんよね。(笑)

約束をしたときは覚えているんです。
例えば、「こういうことはしてはいけない」ということを記憶しているんです。
ところが何かの瞬間、衝動性だとかで忘れてしまって、また同じことをしてしまうんです。
私もよくありました。
でも、行動してしまったときは約束したことを覚えていないというか、思い出すより前に衝動性が来てしまうので、その一瞬はすべて忘れてしまっているんです。
そして、行動が終わった後に思い出すかというとすぐには思い出すことはなく、叱られたときに、「あ!」と思い出すこともあります。

さらに、叱られたときに自分が衝動的にやってしまったことすら覚えていないときもあるのです。
その時は 「え?自分やってないよ!」となってしまうんです。
この場合は、うそをついているのではなくて、衝動性によって記憶をなくしていたり忘れてしまったりしているんです。
そんな時に「また約束破ったね!」と否定的な言葉をかけられると、仮に以前に約束していたことを思い出したとしても、「また、やっちゃったよ」と自分を問い詰めてしまうことで自己肯定感を下げてしまいます。

一方、衝動的になってしまって、行動したことを覚えていない場合は「約束破ったでしょう」と言われても「やっていない」としか言えないんです。
その時に「なんで嘘つくの?」と問い詰めてもダメなんです。
たとえ「なんで約束守ってくれないのかな?」と優しく声掛けしたとしても、結果として自己肯定感を下げてしまうんです。

じゃ、どうすればいいの?
そうなってしまいますよね。
毎度、毎度同じことを繰り返すしかないんです。
本人が努力していないことで起こってしまったことであれば、注意すればいいんです。
しかし、努力しても治らない。
脳の構造が欠如してしまっているということなんです。

ですから、毎回同じことを繰り返し教える、あるいは紙に書いて見えるところに貼っておくとか、定期的に声掛けをするとか、身につけるもので思い出せるようにするとか、その人に合った覚えていられる方法を見つけないといけないんです。
「忘れるのは注意力が足りないからだよ!」とよく言われます。
でもその注意力が足りない厳しい状態になっているのであって、そういわれてしまってもアウトなんです。
「約束を守りなさい」「集中しなさい」「ちゃんと物事を考えなさい」そういう気持ちはわかるんです。

こういう言葉を言ってもらうことで治るんであれば、本人はもっとやってます。
頑張って治るならこんなに苦労しません。
治るものではなくて、何度何度もいろいろな方法で試行錯誤をして、改善を重ねて忘れにくくしていくしかないんです。
子どもの時は、いろいろな誘惑があります。
友達と遊ぶ、ゲームをする、漫画を読む、そういう中で生活をしていかなければならないんです。
ですから自分が「約束を守らないといけない」と思っていても、ちょっとゲームが目に入ってしまうとその瞬間忘れてしまうんです。

なので、本人だけの努力ではどうにもできないことなんです。
多感な時期でもあるので、注意や叱る際のひと言でどんどん自己肯定感も下がってしまいます。
約束を破ってしまったらその事実に着目するのではなくて、何度でも教えてあげてください。
「この前約束したけど、忘れちゃったのね」程度であればいいかもしれないけれど「なんで約束したのに破ったの!」という言い方はダメです。

子供にもカミングアウトをしていて特性のことをわかっているのであれば、「また忘れちゃったね。でも大丈夫、また思い出せるように今度はこうしてみよう」というように、一緒に考えていくのであればいいんですけどね。
もしカミングアウトしていない場合は、叱っても効果はありません。
起こったことは軽く流して、同じことでも教えてあげてください。
歩けない人に「なんで歩けないの!?」「歩きないよ!」と言っているのと同じなんです。
手助けがないことにはどうしようもないことなんです。
言われることで一番悔しいのは本人です。
ですからぜひとも配慮をお願いします。

今日は、ADHDの特性を持つ人に言ってはいけない言葉というテーマでお話をさせていただきました。

それではまた!

音声反訳:yoshiyuki kato